第03話-1

いよいよ7月半ば、夏真っ盛り!・・

セルムラントの街は涼しい服装の人々で溢れ、海岸はいよいよもってごった返すようになってきた

・・と、本当なら早速ユニオンの連中の様子を見たい所だが、今回は少しセルムラントを離れて、中国へ行ってみよう


中国・西安の街

今でも「らしい」街並と情緒溢れる人々の住む街・・

大津波の影響で土地が流れ人がいなくなり・・黄河一帯には代わりにS.Gの施設が建ち並ぶ結果となっていた

四千年の歴史の土地はさすがに伊達ではないようで、西安支部は建設以来何事もなくそこに建っている


・・そんな黄河の主流・・それも終わり頃に、当の支部はあった

宇宙中にS.Gがある今、本部は銀河の中央に位置しており、地球・・太陽系の中でも特に地球は、左遷された部隊やお荷物部隊の巣窟と化していた


その中に、あの第8特別実験小隊の姿も・・


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目を覚ましたリィズは、ものの見事にベッドからずり落ちていた

彼女は下着姿で、そのまま壁際まではいずって移動していく

その光景は・・何ともはしたない。


・・ああ・・今日って休みだっけ・・


そんな事を思いながら頭をくしゃくしゃとかく

低血圧というワケではないが、夜更かしが過ぎる彼女は朝に弱い

壁に掛けてあったワイシャツを羽織り、小さなガラステーブルに置かれているボトルを手に取った


・・んぐ・・


朝も早から一杯目・・コップに移すのではなく、直接ボトルを飲み干す

中身はもちろん・・・「酒(ワイン)」である


「ん~♪・・やっぱ朝はこれに限るわぁ♪」


・・警察官、しかも未成年の彼女である(これでいいのか?)


「隊長、朝ッスよ・・」


ラルフが鍵のかかっていないドアを不用意に開けたのは、リィズがボトルの空を置いた瞬間だった


「う!?」

「こんのどあほぅがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


せっかく起こしに来た彼の善意も、その行動で一瞬にして「覗きに来た」という状況に一転してしまった


・・しばらく部屋からは、ラルフの悲鳴だけが響き渡っていた


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数分後・・

支部基地内の広いラウンジに、長い三つ編みの少女がいた

とは言ってもリィズの例もある、彼女とて何者かは定かではない

しかし・・ちょっと「とろーん・・」とたれた目と、周囲に発しているオーラは他を寄せ付けぬほどポケポケなものだった


ラウンジには朝食を取りに来た他の隊員が往来している

二百人は座れるであろう広い場所は、緊急時には別の用途も考えて設計されているのだが・・今はどうでもいいか。


その一角に座っていた少女は、リィズとラルフの姿を見かけると声をかけた


「おはようございます、たいちょー、ラルフさん。」


にこっ・・と笑う彼女

リィズは「おはよう」と手を振るが・・ラルフはぐったりうなだれ、リィズに引きずられる形でこちらに向かってくる

「朝からプロレスでもしてたんですかぁ?」

「それは違うわよレオネ、このアホが覗きに来たからとっちめただけ、女の敵を片づけてきただけよ」


・・だから、俺は起こしにいっただけなのに~・・

しかし不用意にドアを開けてしまった彼も悪い


レオネと呼ばれた少女・・「レオネ三佐」は隊の副隊長である

前回の月での戦いでは、地球でリィズの「始末書」の処分を手伝っていたので、参加していなかった

「今日はたいちょー、非番でしたよね~?」


レオネは見た目通り、間延びした口調で聞いてくる

リィズはいつの間にか持ってきていたコーヒーのカップを口に運びながら、こくこくと頷く

・・飲み干した所で右手をひらひらと振りながら言った


「どーせならあんた達も休まない?有給休暇くらいまだ残ってるんでしょ?」

「たいちょーと違って、私達は有給一回も使ってませんもの。」

「・・・」


リィズの額に、「ぴき」と血管が浮いた

いかに特Aに認定され、隊長職で、一応お偉い立場といえども・・彼女にはそうそう休む回数はない

その数少ない有給すらもさっさと浪費してしまった彼女にやってきた、これは久しぶりの振り替え休暇なのだ


「・・はいはい、じゃあせっかくの休み・・私も女らしいことさせてもらうとしますか・・」


リィズはガッツポーズを決めるようにして叫ぶ


「まずはゲーセンでハイスコアたたき出してから!!」


彼女は一応容姿端麗、ちょっとキツめのイイ女といった所だろうか・・19にしては全体のボリュームもでかい。

しかしラルフもレオネも、そんな彼女のダメな所しか見えていないため(ゲーセンでどこが女らしい休日につながるのか?)


・・「嫁のもらい手があるのかな、このひと」・・


そう思って、苦笑いする


「じゃあ俺、相棒の調整に行ってきます」

「がんばってくださいなぁ~」


レオネが言い終わる頃にはラルフはいなくなっていた

・・彼はギアをとにかく大事にしていて、量産型のポンコツであるにも関わらず「相棒」と呼んで大事に大事に扱っていた

彼のギアは三年前の量産型「G-H/SG-7」・・前回大破したが、ようやく修理の目処がついたらしい

ギアもまたパソコンのように、「三年経ったら粗大ゴミ」と言われているものである

・・だがここでは「武装」の試作実験が多く、機体は何回か改修して使われていた


・・もうそろそろ限界だと思う。


だが・・ラルフはどうでもよかった、ただ単に量産型の渋いフォルム・・しかも実験小隊故の「自分専用機」がいたくお気に入りだったのだ

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リィズは中国を離れ、一路ヨーロッパへ向かっていた

今日はセルムラントでちょっとした祭りがあるというので、そこへ行ってぶらつくつもりでいたのだ


S.Gの制服とは違い、割とカジュアルなスタイルで決め、飛行機でひとっ飛び


「ふぅ・・しっかし・・・久しぶりに一人になったわね・・」


伸びをしながら窓の外を眺めるリィズ

宇宙へ数分の時代である、飛行機の航行法も格段に変わり、今では大陸間の移動にも五分とかからない

(さすがに短距離の移動には電車などの手段が用いられているが)

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セルムラントは確かに、賑わっていた

メインターミナルという首都の中心街、高い所にそびえるハイウェイ、ちょっとローカルっぽく見える電車・・


・・田舎ねぇ~・・


もちろんそれはセルムラント共和国の事ではない、自分たちのいた西安の事だ

いくら昔黄河が氾濫した事が原因とはいえ、あまりにも街の発展率が悪い・・・


そんな事をいつまでも考えていたってしょうがない

彼女は休日を楽しもうと、うきうき顔でメインターミナルへ入っていった


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・・中国・西安支部


「ぽけー・・」


レオネは基地内の縁側(?)に座って、ぽかぽかと(ぎらぎらと)暖かい太陽を見上げていた

手には湯飲みを持っていて、中にはもちろん熱いお茶が入っている


レオネは台詞が間延びしているだけでなく、さらに磨きをかけてぼーっとしていた

そんな彼女が三佐・・・副隊長なのはもちろん、リィズ同様に能力があっての事である


「・・副隊長、口開いてます」

「はぅ~・・?・・・・・あ、ご指摘どうも。」


・・突っ込み入れた隊員も苦笑い。

彼女はお茶をすすりながら、にこにこと笑っている


「・・平和っていいですぅ・・・」


・・世の中が、というよりは彼女の頭の中が・・平和だろう。


・・突然、隊員の一人がレオネの元へあわただしくやってきた


「副隊長!大変です!!・・大津波の警報が出てます!!!」

「お茶がおいしいですよぉ~・・」

「・・あの、副隊長。」

「あら、はいはい・・なんでしょうかぁ?」

「・・・・・こ、これを」


しばしあっけにとられた隊員だが、すぐに真面目な顔に戻ってその「レポート」を手にしたナビに表示する


レオネの表情が一瞬にして「きりっ」となる


「大津波・・これはまずい事ですねぇ・・・」

「しかも正体不明のテロ集団が、防衛ラインを突破して地球へ向かっている模様です!!」

「・・ふむ・・これもまずい事ですねぇ・・・・」


・・顔は真面目だが声はトロい。

まだここに配属されて日も浅いその隊員は、頬にだらだらと汗を流していた


・・この人が本当にウチの副隊長でいいんだろうか・・


「たいちょーはいないですから、わたしが指揮しますぅ」


間延びした声で、しかも手に湯飲みを抱えたままレオネは叫ぶ(そうは聞こえないが)


「第8特別実験小隊、出撃ぃ~!!」

「・・って、準備もなにもできてませんよ・・・」


レオネはぽりぽり、と頭をかいて


「・・じゃあ、準備して下さぁい」

「・・・・・・・・了解しました」

調子が狂うどころか、どーでもよくなりそうな空気が漂う

噂によると彼女はどこぞの高貴な家の出らしい・・

それでも、こういう娘が育つというのはどーいう環境なのだろうか・・

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そのころ・・

格納庫では、敵の接近も知らないラルフが「相棒」にほおずりしていた


「やっぱいいねぇ♪・・玉の肌ってやつ?」

「・・一尉さんよ、あんたその癖なんとかしてくれ・・・気持ち悪ぃぜ?」


整備員もあきれ顔だった。

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第03話「首都攻防戦」


仕事内容(メニュー):セルムラントの防衛

目的地・標的(ターゲット):セルムラント海岸線地域


依頼人(クライアント):なし

注意事項(ワーニング):自分達の街だ、流石に破壊するなよ?



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